マレーシアの観光バス事故について現地からの見解

マレーシア国内旅行

2024年10月24日、マレーシアで日本人を乗せた長距離観光バスが衝突事故を起こし、一人の方が亡くなったというニュースが流れた。せっかく楽しいはずのマレーシア旅行がこのような形になってしまったこと、ご冥福をお祈りする。現地に住んでいる身としてはやるせない思いである。
現在事故調査中の部分は多いものの、下記を参照していただきたい。

1 dead and 12 injured after bus carrying Japanese tourists smashes into truck in Malaysia
One of Japan’s largest travel agencies says a tourist died and 12 other people were injured when their a tour bus smashe...

7日間でマレー半島を縦断する日本のJTBが企画しているツアーらしい。おそらくペナン、キャメロンハイランド、クアラルンプール、マラッカ、ジョホールバル、最後にシンガポールあたりを北から南へ横断するツアーであろうと推測される。

マレーシアでは30〜40年前の車をきちんと整備して乗っている方が非常に多い。写真は日産ブルーバード。



長年マレーシアに在住している僕(FUMI)が今日は本当の意味でのマレーシアにおける自動車や運転の事情を今日は説明しよう。ちなみに僕はマレーシアで毎日車を運転している。

まず大前提に、ネットの意見やコメントを見ると誰も彼もが「東南アジアの運転は危ない。マレーシアの運転は荒い。危険だから東南アジアでは運転しない方が良い。危険だからバスには乗らない方が良い」という意見ばかりが見て取れる。だが一つだけ言っておこう。そんなことはない。それは事実の端を断片として切り取っただけの話である。長年マレーシアに住んできた僕から見てみればどの国でも一緒だ。自動車運転なんて所詮「人間が機械を扱っているにすぎない」という事実。つまりどこの国でも大差はない。日本人が他の人種よりも機械操作が得意なんてことは1億%ない。という大前提で話を進めよう。

ちなみにこの事故はマレーシア北西部の島、ペナン島からマレー半島の中部に位置する避暑地・キャメロンハイランドに向かっている途中だったとのこと。そして不思議なことにこの観光バスはキャメロンに向かう途中の山道(上り坂)でトラックの後ろの部分に突っ込んだとのこと。その山道はもちろん僕も運転したことがあるが、かなり険しい上り坂なのでスピードを出すことすら難しい。にもかかわらずrear ended、つまり前を走るトラックの後部に突っ込む、というのはどのような状況なのかが若干想像しづらい。事故原因は今から検証されることであろう。


僕はちょうど30年前、17歳の時にここマレーシアで運転免許を取得した。そしてそれからずっとこの国で車を運転してきた。車は何よりも重要な交通手段であり、バスよりも電車よりも重要。国そのものが車で移動する前提でインフラが整えられている。国民は公共交通機関をほぼ使わない。自家用車かバイクでどこにでも移動する。国境を超えてタイランドやシンガポールに入国する際も多くの人々が自家用車で移動する。(もちろん長距離バスで移動する方々も多いが)

まず初めに思いつく限りのネガティブな部分を含めた交通事情をランダムに語りたいと思う。

・無免許運転はあたりまえ
・バイクは3〜4人乗りがあたりまえ(6人まで見たことある)
・子供も無免許でバイクに乗る(別に捕まらない)
・ノーヘルでバイクが日常
・バイクの事故が非常に多い
・逆走は日常
・自転車はほぼ存在しない
・信号がほとんど存在しない(道路の作りそのものが信号を必要としていない)
・車検は存在しないが自分で整備する
・無免許、非保険、未道路税納付はあたりまえ(つまり事故ると相手も自分も補償されない)
・仮に警察に捕まっても賄●でやりすごせる
・ガソリンが安い代わりに高速料金・有料道路料金がチョコチョコかかる(ちなみにタイは逆)
・運転は高速道路では超スピード、街中では普通
・日本と違って割り込みに道を譲ってくれる。その代わり自分も譲ってあげる。(誰も怒らない)
・ダブルパーキングは日常
・よっぽどのことがない限りクラクションを鳴らさない(めんどくさいので)
・左右のウィンカーはは出さないことが多い(めんどくさいので)
・車もバイクも赤信号でも普通に通過する(周りに車がいなければ全員通過)
・高速道路では150〜160km/hはザラ
・高速道路の制限はちなみに110km/h
・警察車両を高速道路で110km/h以上で追い抜いても見逃される場合が多い
・渋滞しても「まあいいか」という心がある。それによって仕事に遅れたらそれが立派な理由になる
・野生の象の群れが高速を横断することがあり、事故も多い
・整備が不十分な車が高速の路肩に止まっていることが多い
・なぜか横転するレベルの事故が多い
・追い抜き車線を走っているとすぐに後ろから煽られる
・歩行者のために車は止まってくれない。自動車最優先の国
・横断歩道があっても意味がない。歩行者用信号もほぼ意味がない
・40年前の車も普通に走っている
・どのマンションの駐車場も数が慢性的に足りておらず、路上駐車はあたりまえ
・なぜかホンダ車に乗っている人は飛ばす(著者の個人的見解)
・暑い国なのでタイヤがバーストすることが非常に多い(特にトラック)
・200m移動するのにも徒歩を避けて車を使いたがる

他にもさまざまなことがあるだろうが、頭に浮かんだのはこんな感じである。

さて、ここで今日の主題である「マレーシアの運転は危険なのか?」という件を語ってみたいと思う。

答えはYesであり、Noでもある。なぜなら僕はこの30年間で事故に巻き込まれたことは1度しかない。それは無免許運転のバイクが向こうから突っ込んできたという事故だけである。大した事故ではなかった。(ちなみに突っ込んできたバイクは逃げた)

3〜40年前の一件整備不良に見える古い自動車も、皆綺麗に整備して運転している。ただし整備が上手くいっていなかったり部品交換をしていないために立ち往生してしまう車は確かに多い。が、そんなことを言ったら日本だって同じだ。日本には車検というくだらない天下りシステムがあるが、車検があるからといって立ち往生しないという保証はどこにもないし、車が超安全に整備されているとは言い難い。
車検というモノが一切必要ないというのを肌で感じてしまう。なぜならここマレーシアでは自分で定期的に整備や検査に出向くのだが、誰も整備不良で事故って命を落としたくはないから最低限の整備はちゃんと行っている。僕も必ず定期的に整備場に行く。

国産車であるProton やPeroduaというマレーシアのメーカーがあるのだが、僕はその国産車に乗っている。元々は三菱が技術を教えてマレーシア国内で自動車を作るぞ!という目標で立ち上がった一大プロジェクト。もちろん優秀な車である。輸入車も非常に多い。ということで車の性能そのものはどの国と比べても全く変わることがない。

さて、運転の荒さはどうか?という点だ。答えから言うと「高速道路ではスピードを出しまくる」というのが答えだ。スピードが速いだけで決して運転が荒いというわけではない。だいたい追い抜き車線では150〜160km/hはザラだ。マクラーレンとかポルシェとかフェラーリはもっと酷い。だから人々は追い越し車線にはあまり入りたがらない。追い越し車線にいるとすぐに後ろにピッタリつけられて煽られる。警察の緊急車両もすごく煽ってくる。VIP(政治家とか州の王様とか)のコンボイも煽ってくる。

そして事故の件数についてであるが、毎日車に乗る僕からすると一番事故が多いのは実は高速道路である。一般道よりも圧倒的にその数が多い気がする。高速道路やバイパスなどを1回走ると必ずと言って良いほど1回は事故に遭遇する。長距離で高速道路を移動する際にはほぼ100%複数の事故に遭遇する。

スピードの出し過ぎがマレーシアにおける事故の一般的な原因と推測できるが、そうでない場合もあるだろうし特定はできないであろう。

確かに今回の観光バスの事故はとても不運ではある。が、その原因もまだ特定できていないので「マレーシアの観光バスは危ない」と結果づけてしまうのはいささか安易な思考である。僕も10代の頃はマレーシアで長距離バスによく乗って遠い街に旅行に行っていた。が、もちろん何十回もバスに乗ったのにもかかわらず危険だと感じたことはほとんどない。強いて言うならばバスの内部が真冬のように寒くてジャケットがないと凍えるレベルである、と言うことくらいである。
そしてバスの車内では大音量でロック音楽が流れていて、夜間はそのせいで眠れないということくらいであろう。運転手もそれに合わせて歌ってる。ちなみにエアコン最大でロック音楽大音量にもちゃんと理由がある。運転手が居眠りせぬための自己防衛である。だからそれは僕にとっては全く問題がない。安全に届けてくれさえすれば何の問題もない。

僕も2024年10月、日本からの来客があり、大型観光向けのバンを手配した。運転手付き。全く安全であった。

そしてこれも不思議なことに僕はこの30年で自分自身で運転していて「危険だな!」と感じたことは一度もない。高速道路では走行車線でトラックかバスの後ろを走っているのが一番安全で一番賢い。トラックやバスの運転手は路線を全て把握しているので、どこでスピードを出せば良いか、どのくらい車間距離を開けて走れば一番効率が良いか、どうすれば事故を避けられるか等を熟知しているのでそんな大型車両の真後ろが一番安全である。その結果、、、不必要に後ろから煽られることも絶対にない。僕はマレーシアでは自然とそのような運転をするように心がけるようになった。

逆に普通乗用車の後ろを走っていると、後部ガラスにスモーク(ティンティッド)をかけている車が大半なので、その前を走る車が見えないことが多い。その結果、トラックやバスと違って急ブレーキ等をかけることがある。それが危険だ。おそらく事故の要因はそんな事案も含まれると思っている。

話をまとめると、交通事故/自動車事故というものは正直に言うと推測不可能な原因で起こることも多い。つまりどんなに安全運転していようと、どんなにスピードを出していようと関係がないのだ。自爆するケースもあれば相手方を巻き込んで、そして巻き込まれての事故も多い。なのでその危険な要素をできる限り取るという努力をするしか方法がない。だがどんなに自分が気をつけていても巻き込まれることはあるだろうし、こればかりはもうなんとも言えないのが現実である。

僕なりのまとめは・・・

高速道路ではきちんと走行車線を走ること。

これすら守っていれば多少は気がまぎれるのではないかと思う。先述の通り街中での運転はそこまでスピードも出ないし道は譲ってくれるので大丈夫であろう。(在住者向けコメント)


だが最後に一つ。日本からの旅行客で国際免許を取得してレンタカーで運転したい方々へ一言。

やめておきなさい。Grabという配車サービスの方が結果的に安全で安いし、駐車場を探す手間も省ける。悪いことは言わない。レンタカーで運転するのはやめておきなさい。毎日マレーシアで運転している僕が言うのだからおそらく間違えてはいないはず。どんなに街中の運転が安全と記述したところで日本の交通ルールはほぼほぼ一つも適応されず、現地ルールなるものが多く存在する。道も迷路のように非常に複雑。慣れるまでに相当の時間を要するはずなので、運転しないのが一番良い。配車サービスのGrabの運転手は全員が地域を完全に把握しているので安全であると言って良い。少なくとも外国人よりは。

今日はマレーシアの交通安全の事情について僕なりに語ってみた。

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