2024年8月23日朝8時ころ、マレーシアのクアラルンプール市内のとある繁華街の道路が陥没する事故が起きた。インドからマレーシアを観光で訪れていた散歩中の女性が、陥没した道路直下にあった排水用の川に転落、そのまま行方不明となったとのこと。
警察の懸命な捜査にもかかわらずまだ彼女は見つかっていないとのこと。
道路陥没事故があったのはクアラルンプール中心街の少し西に位置するMasjid India通りという繁華街で起こった。Tuanku Abdul Rahaman通り(通称TRA)という幹線道路と並行する比較的道幅の狭い道路である。少し歩けばCentral MarketやChow Kit Marketという観光客がよく訪れるエリアでもある。
今回の事案のようにマレーシアではよくインフラの老朽化等による事故が起こる。もちろんマレーシアに限らず世界中でこのような事故は避けられないのだが、マレーシアを長く見てきた僕からしてみると、その事故の割合は低くないと思っている。
例えば過去の大きな事故で言うと1994年のコンド(マンション)崩壊、数年前に起こった幹線道路の大規模道路陥没、キャンプ場で起こった大規模地滑り、今年に入って起こった道路樹木の地盤が緩んだことによる倒壊事故。河川近くの土手の崩壊。毎日必ず落雷による樹木等の倒壊。そして毎年必ず起こる規模を問わない洪水による被害。これ以外にももちろん数えきれないほどのインフラの事故が起こっている。分析すると多くの事案がマレーシアの気候と密接に関連しているのは確かである。
マレーシアは熱帯雨林気候。ほぼ毎日スコールが降り、東海岸では長期の雨季による雨の影響もある。気温も非常に高くインフラの劣化はとても激しい。特に雨の影響によって引き起こされる事案が非常に多い。ほぼ毎日降る大量の豪雨によって岩も砂も人工物も大きな影響を受ける。今回の事故の場合は道路の下に隠れた排水溝がアスファルト路面の直下の岩や砂を徐々に削り、アスファルトの路面を支えきれなくなってしまったとの見方が強い。
観光でマレーシアを訪れる際に何を気をつけたら良いか?と言う点だが、正直言って突如起こってしまうこれらの事故を予測する術は全くない。唯一できることとしたら過去の事例から少しでもその可能性を頭に入れておくことくらいである。たとえばKL市内に何百本とある巨大な樹木のそばを通行する場合には少しでも倒壊の危険性を頭の隅に置いておくと言うことだ。かと言って実際に起こってしまった時はもはやなすすべもそこまでないと言うことは確かなのだが。
今回のような道路陥没事故もまた避ける術は皆無に等しい。道を歩いていたら道路が陥没する。こんな事故は避けようもない。
マレーシアに長年住んでいる僕としては最低でも回避できる事案だけを頭に入れて行動するようにしている。落雷や樹木崩壊は少なくとも回避できる部類に入るのではないかと思う。スコールが降ってきたら絶対に外に出ない。これだけで落雷の被害はほぼ回避可能。そして巨大な樹木崩壊については樹木のそばを通る際には頭の中で「この木が崩壊するとしたらどちらの方向に倒れてくるかな?」と常識の範囲でシミュレートしてみる。このようにするだけで多少なりとも回避できることは少なくないであろう。
あとは動物による事案等もあるので、その件はまた別の記事で書こうと思う。
※追記(8月28日)上記の事故からちょうど5日後の今朝2時頃、現場から50mほど離れた場所で、2ヶ所目の道路崩落が発生。小規模ではあるものの確実に穴が空いている状態である。市役所もその事例があったことを認めている。クアラルンプール周辺はLimestoneという石灰岩の地質で出来上がっている。石灰岩は酸性によって侵食されていく性質があるので、それも原因の一つだと言われている。
※追記2(9月2日)マレーシアは事故で行方不明となっている女性の9日間にわたる救出捜索を断念、打ち切ると発表。レスキューチームの安全や健康面の懸念もその理由の一つということである。今後は救出ではなくrecoveryとしての捜査を続けるとのこと。
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